研究概要 |
当年度は,1.硫黄架橋型フェノール環状オリゴマー,チアカリックス[n]アレーン(TCnA)の生成機構の精査,2.環員数nの大きなTCnAの合成,および3.硫黄-メチレン混合架橋型カリックスアレーンの合成を検討した. 1.生成機構 LC-MSにより,塩基触媒NaOHの存在下,フェノール(PhOH)と単体硫黄S_8との反応を精査した.その結果,反応は170℃以下での鎖状硫黄架橋オリゴマーの生成と,230℃での環化の二段階で進むことが判った.仕込比がPhOH:S:NaOH=1:2:0.5のとき,TC4Aが最も高収率(51%)で得られた.硫黄の量がこれを増えると,ポリスルフイド架橋の鎖状オリゴマーが生成しTC4Aの収率が低下した.一方,Na^+イオンは鎖状オリゴマーの環化時にテンプレートとして働いていることが示唆された. 2.TC6A, TC8Aの合成 PhOHの硫化環化反応では実質的にTC6A, TC8Aは得られなかった.一方,1.から,TC6AやTC8Aの生成にはより高分子量の鎖状オリゴマーの生成が必要であることがわかる.そこでPhOHの硫黄架橋二量体2,2'-チオビス[4-tert-ブチルフェノール](1)を原料として用いたところ,TC6A, TC8Aがそれぞれ11%,5.3%の収率で得られた. 3.S-CH_2混合架橋カリックスアレーン 酸触媒TsOHの存在下,二量体1とホルムアルデヒドとの縮合反応によりS-CH_2交互架橋のジチアカリックス[4],トリチアカリックス[6],テトラチアカリックス[8]アレーンをそれぞれ16%,10%,5%の収率で得た.ジチアカリックス[4]アレーンの遷移金属イオンに対する溶媒抽出の結果,抽出能を有することが判った.また,Pd(II)錯体の結晶構造解析の結果,TC4Aと同じく,架橋硫黄基の金属イオンへの配位が明らかとなった.
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