研究概要 |
我々はこれまでに,白金メタラサイクル錯体([Pt(phpy)_2],[Pt(thpy)_2](Hphpy=phenylpyridine, Hthpy=thienylpyridine)が白金を配位原子とする配位子として振る舞い,他の金属イオンに配位し供与型白金-金属結合をもつ錯体を与えることを報告してきた.これは白金メタラサイクル錯体の白金イオンが強配位子場下にあるためdz_2軌道のドナー性が増し強固な供与型金属-金属結合を形成できるためである. 今回新たにビフェニル誘導体錯体([Pt(dbbp)(en)],[Pt(dbbp)(bpy)](H_2dbbp=4,4'-di-(t-butyl)biphenyl, en=ethylen-diamine, bpy=2,2'-bipyridine)をドナー錯体として,銀やカドミウムとの錯体を合成した.今回用いたメタラサイクルの白金周りの配位環境は従来のものと類似しているが,環内に2つのPt-C結合をもついう点が異なっている.アクセプターとしてAgC10_4を用いた場合,Pt_2Ag_2四核クラスター錯体が,Cd(cyclen)^<2+>との反応では1:1錯体が得られた.これらの構造は報告済みの[Pt(phpy)_2],[Pt(thpy)_2]系がつくる錯体の構造と類似してはいるが,明瞭な違いが認められる.すなわち,Pt-Ag結合,Pt-Cd結合が白金メタラサイクル面に対して大きく傾いている.この構造の違いは,ビフェニル配位子の白金に配位した炭素原子のアクセプター金属への配位性が増していることによる.
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