研究概要 |
分子触媒による不斉合成が最近大きな注目を集めているが、我々の研究室でも、キラルな1,2-ジアミンを分子触媒として用いるアルコール類の高エナンチオ選択的不斉アシル化を見出した。キラルな1,2-ジアミンは(S)-プロリンから簡便に誘導され、分子量200程度の小さな分子触媒で、反応には金属を一切用いない環境調和型(グリーン)触媒である。このキラルな1,2-ジアミンを用いる触媒的不斉アシル化は種々のアルコール基質に広く適用できることをこれまで明らかにしてきた。今回は、不斉誘導がより一層困難と予想される遠隔対称ジオールである環状1,4-ジオールに対して、キラルな1,2-ジアミシ触媒存在下、塩化置換ベンゾイルとの反応を検討した。その結果、基質に対してわずか200分の1当量のジアミンを用いるだけで、オキシラン環、シクロプロパン環、アジリジン環などを有する対称1,4-ジオールを高エナンチオ選択的に非対称化することに成功した。これらの非対称化生成物は、種々の有用な天然有機化合物の環状キラルビルディングブロックとなる。 さらに、この触媒的不斉アシル化の実用性をより一層高める研究も行っている。アキラルなアシル化剤である塩化ベンゾイルをポリマーに固定化したものを合成することができた。このポリマー固定化アシル化剤を用いて、アシル化生成物の分離・精製が簡便なアルコールの不斉アシル化を現在、詳細に検討中である。
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