研究概要 |
パプアミドAおよびBは1999年パプアニューギニアの海綿から単離された7つのアミノ酸からなる環状デプシペプチドを母核に4つのアミノ酸と2,3-Dihydroxytrimethyldecan-(4Z,6E)-dienoicacid (Dhtda)からなる側鎖が結合した構造を有している。非蛋白性アミノ酸L-ホモプロリン(L-Hpr),β-メトキシチロシン((β-OMe)Tyr),D-3-ヒドロキシロイシン(D-(β-OH)Leu),L-3,4-ジメチルグルタミン(L-(3,4-DiMe)Gln),L-2,3-ジアミノブタン酸(L-Dab)を含む興味ある構造であるが一部の立体構造は不明である。パプアミド類は海洋起源であるため物質供給に問題があり,また極めて強い抗HIV活性ならびに抗腫瘍活性をもつことから合成化学的に構造決定ならびに物質供給に寄与できるものと考え,パプアミド類の全合成研究を開始した。 まず環状骨格に含まれるβ-OMeTyrの絶対配置を決めるためβ-OMeTyrの4種の異性体全てを合成した。これらを用いて天然パプアミドに含まれるトリペプチドを合成し、天然品のスペクトルと比較し、天然パプアミドに含まれるβ-OMeTyrの絶対配置の決定に成功した。 D-(β-OH)LeuはRu-(S)-BINAPを用いる動的速度論分割法をよる立体選択的合成の開発に成功した。 環状構造に含まれる構成アミノ酸の合成が完了したので、これの合成を検討した。これまでに環状構造の前駆体を合成し、閉環反応を検討し、約50%の収率で天然の絶対配置を有する環状ペプチドを得ることに成功した。各アミノ酸の縮合では縮合成分と縮合剤に適、不適があることが明らかになった。現在、最終全合成に向けて合成研究を継続している。
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