研究概要 |
リン原子上に不斉中心をもつ光学活性ホスフィン部位とイミノ基,エーテル,またはスルフィドを同一分子内にあわせ持つ,いわゆるP/N,P/O,P/Sハイブリッド配位子を設計・合成し,それらの不斉触媒能について検討した。 P/N配位子に関しては,光学活性オキサゾリン環またはピリジン誘導体をもつ配位子を多数合成し,それらの不斉触媒反応に及ぼす配位子の立体構造と電子的影響について調べた。オキサゾリン環を有する配位子の場合には,パラジウム錯体触媒不斉アリル化において,配位子とパラジウム原子との比を1/1から2/1に変えることによって,反応性が著しく向上するとともに,生成物の立体化学が95%(S)から59%(R)に大きく逆転することが分かった。一方,ピリジン環を有するイリジウム錯体をイミンの不斉水素化に適用した結果、約70%の不斉収率の発現が見られた。 P/O配位子として,光学活性t-ブチル(o一ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンを合成し,その銅錯体を用いてα,β-不飽和ケトンへのジエチル亜鉛のMichael付加反応について検討した。その結果,最高95%鏡像体過剰率をもつ生成物が得られた。ベンゼン環と5員環が縮環した剛直かつ効果的な触媒不斉空間が形成されたためと考えられる。 P/S配位子のひとつである光学活性t-ブチル(o-メルカプトフェニル)メチルホスフィンの合成を試み,その前駆体までをほぼ100%の光学的純度で得ることができた。 一方,アミノベンジルホスホニウム塩と酸無水物との反応を試み,分子内環化を経るインドール誘導体の合成法を見いだした。また,アミノフェニルプロペニルホスホニウム塩を用いた場合には,一炭素減成を伴って,インドール環が生成することがわかった。さらに,これらの新規環化反応の反応経路を明らかにした。
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