研究概要 |
本研究では「安定な面不斉を有するヘテロ中員環化合物」の合成法を確立し,立体化学的挙動について精査した.また,面不斉ヘテロ中員環化合物を不斉合成素子,不斉塩基,不斉配位子として活用することに成功した. 1)ラセミ体合成:3,7位にメチル基を有する9員環エーテル1a,および9員環アミド2aはネリルアセテートから4工程で合成した.その他の置換様式の9員環アミン類は入手容易な鎖状アミドから5工程で合成した. 2)光学活性体の調製:ラセミ体の9員環アミンに光学活性カルボン酸を作用させると,エナンチオマーの分割を伴う塩形成が起こることを見出した.この分晶法により光学活性体(>90%ee)の大量調製が可能になった.一方,アキラルな鎖状アミドの環化を,光学活性な相関移動触媒の存在下に行うことで,光学活性なアミド2aを不斉合成することにも成功した 3)不斉合成素子としての活用:面不斉エーテル1,およびアミン類2の分子間,分子内反応がいずれも立体特異的に進行することを見出した.この結果から,これら面不斉ヘテロ中員環化合物が種々の中心性不斉分子の不斉合成素子となることを明らかにした. 4)不斉反応剤,不斉配位子としての活用:光学活性な9員環アミンをN-ジアルキル化することで,面不斉を有する四級アンモニウム塩を合成した.このアンモニウム塩はSchiff塩基のアルキル化における不斉触媒として有用である.一方,アミド2aを配位子とする白金,およびパラジウムの錯体の合成にも成功した.これらの錯体も安定な面不斉を有しており,従来にない不斉反応剤としての活用が期待される.
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