ポリエチレンオキシド鎖の両端にヨウドパラジウム錯体を結合した二核パラジウム錯体を合成しNMRスペクトル等で構造決定をおこなった。これにテトラフェニルボラト銀を反応させたところ、ポリエチレンオキシド鎖部分が環化したクラウンエーテルが生成した。この反応は、二核錯体の有機鎖配位子が銀塩の添加によりトランスメタル化反応をおこない、パラジウムを含む大環状分子を形成したのち、カップリングをともなう還元的脱離によって生成物を与えるという機構により進行することがわかった。この反応を一酸化炭素存在下でおこなうとカルボニル基を環内に含む大環状ケトンを合成することができた。 クラウンエーテル類をホストとして用いるロタキサン合成を行なった。フェロセンのシクロペンタジエニル配位子にアミノメチル基が結合した分子をゲストに用い、クラウンエーテルをホストに用いて酸性条件下で反応をおこなうとフェロセンを軸分子に含む数種類の擬ロタキサンを得ることができた。また中性条件下でも溶液を適当な印可電圧で酸化しつつ水素源となる化合物を添加すると、擬ロタキサンが生成した。これは、電気化学的な酸化反応を引き金にしてロタキサン形成をおこなった初めての例である。 重合反応を用いる大環状分子の合成をおこなった、環構造をもつ二核アリルパラジウム錯体に大過剰のアルコキシメチレンシクロプロパンを反応させると重合が円滑に進行し、大環状リビングポリマーを得ることができた。新構造をもつブロック共重合体の合成もおこなった。
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