研究概要 |
本研究では、分子内に芳香環に隣接したものと隣接しないものとの2種類のカルボル基をもつ1-フェニル-1,n-ジカルボニル化合物をトリメチルシリルクロリド存在下、DMF中での金属Mgからの電子移動型反応を行い、引き続き反応混合物を加水分解するという極めて簡便な操作により処理すれば、分子内ピナコールカップリング反応が効率的に起こり、対応する1-フェニルシクロアルカン-1,2-ジオールが69-88%の好収率で得られた。この反応で環歪みの大きいシクロブタン環が好収率で得られることは大変興味深い。これらのピナコール誘導体を酸性触媒存在下にてピナコール転位を行えば、比較的合成が困難な2-アルキル-2-フェニルシクロアルカノンが選択的かつ簡便に得られた。またベンゾイルエステル類からは同様な分子内環化反応が容易に進行し、ケタミンのように興味深い生理活性を有する可能性が大きい2-ヒドロキシ-2-フェニルシクロアルカノンが43-78%の収率で簡便に得られた。 一方、情報機能材料として注目されているフタロシアニン類としてクラウンエーテル橋内に不斉ビナフチル基を含む新規フタロシアニン化合物を合成し、中心金属の他にクラウンエーテル環に第2の金属を補足させるバイメタル型フタロシアニン化合物を創製すると共に不斉ビナフチルの存在によるキラルアンモニウム塩の不斉分割剤としての機能や不斉誘導触媒としての機能について評価することを目的として種々の検討を行った。例えばビスフタロニトリル化合物をDBU存在下、CuClまたはCoCl_2と1-ペンタノール中で反応させると各々対応する中心金属とクラウンエーテル環内に不斉ビナフチル基を含む新規フタロシアニン化合物が28-48%の収率で得られた。一般に含Cu化合物は約740nm、含Co化合物は約720nmの近赤外領域にそれぞれフタロシアニン特有の幅広い最大吸収波長を示した。
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