研究概要 |
先に我々は、5-イミノチアントレンと親電子性フッ素化剤であるSELECTFLUOR^<TM>とを反応させることにより、対応する環状S-フルオロチアザインが得られる方法を見出した。本年度は、10-オキシ、10,10-ジオキシ-チアントレン骨格を有するS-フルオロチアザインの合成とそれらの反応性および、分子構造について検討した。 10-オキシ、10,10-ジオキシ-イミノチアントレン1a、bとSELECTFLUOR^<TM>とをアセトニトリル中で低温恒温水槽を用いて反応させたところ、対応するS-フルオロチアザイン2a、bが得られた(2a;75%、2b;65%)。化合物2a、bは、チアントレンS-フルオロチアザインと比較して、加水分解を受けにくく比較的安定な化合物であった。化合物の同定は、各種スペクトルおよび元素分析により行い、化合物2bにおいては、環状S-フルオロチアザインとしてはじめてX線構造解析によりその分子構造を明らかにした。化合物2bのチアントレン骨格は、舟形配座であり、S-N結合がチアントレン骨格に対して擬エカトリアル位、S-F結合は擬アキシャル位に位置していた。S-N結合距離は、1.435(2)ÅとS-N三重結合を有する有機チアザイン類(1.441-1.462Å)の中で最も短い結合距離を示した。また、S-F結合長は、1.584(2)Åであり、S-フルオロ-S-(p-ニトロフェニル)-S-フェニルチアザインの対応する結合長(S-F;1.638(2)Å)よりも若干短くなっていた。次に、化合物2a、bの反応性を調べるため、モルホリンとの反応を試みた。その結果、反応は速やかに進行し、それぞれ対応するS-モルホリノチアザイン3a、bが56、68%の収率で得られた。化合物3a、bの分子構造については、X線構造解析により明らかにした。また、得られた化合物3の電気化学的性質を電気化学測定システムを用いて検討した。
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