研究概要 |
近年、われわれはチオアミドに二当量のブチルリチウムを反応させることにより、チオアミドジアニオンが発生すること、またチオアミドジアニオンの求電子剤との反応は、窒素に隣接する炭素上で選択的に起こることを見い出している。そこで本研究では、このチオアミドジアニオンを基軸とする新しい含窒素複素環化合物の新合成法の開発と得られた環状化合物の利用について検討を行っている。今回、これらチオアミドジアニオンを用いた反応の適用限界を明らかにするために種々の置換基を有するチオアミドやオキシランを用いて反応を行った。 N-ベンジルチオベンズアミドに対して二当量のBuLiを加え30分撹拌を行った。ついでシクロヘキセンオキシドを加え、その開環反応を行ったところ、anti-N-チオアシルー1,3-アミノアルコールとsyn-チオアシル-1,3-アミノアルコールが合わせて54%の収率で、75:25の比で得られた。さらにこれらの分子内環化反応についても検討した。その結果、anti-体の環化反応は良好に進行し、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジンを60%の収率で与えた。一方、同様の反応をsyn一体に適用したところ、環化反応は進行せずイミドを選択的に与えた。一方、チオアミドの窒素に隣接する炭素上にアリル基を導入し、その化合物のヨード環化反応で5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジンの合成も検討した。その結果、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジンを導くことができた。なかでもナフチル基、2-メトキシフェニル基を有するチオアミドでは、それぞれ収率80,86%でかつ99:1以上の選択性でシス体の生成物が得られた。
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