研究概要 |
近年われわれは、C=S,C=SeさらにはC=Te基を有するアミドやエステルの合成法の開発、構造や反応性について検討を行ってきた。その中でチオアミドの反応性を検討していたところ、チオアミドジアニオンや鎖状チオイミニウム塩が新しい炭素・炭素結合形成反応に利用できることがわかった。そこで本研究ではこれらの活性種を鍵とする含窒素環状化合物合成法の開発を行った。 まず、二級チオアミドにBuLi(2 equiv)を加え、さらにプロピレンオキシド(1 equiv)を加えた。その結果、チオアミドジアニオンによるプロピレンオキシドの開環は位置選択的に進行し、二つのジアステレオマーを与えた。種々のオキシランを用いて同様の反応を行った。メチルグリシジルエーテルの反応でも高い位置選択性を示した。シスおよびトランス-2-ブテンオキシドを用いた反応はトランス開環で進行し、4つのジアステレオマーを導くことができた。これらのジアステレオマーは、精製の段階で容易に分離することができた。 さらに得られたN-チオアシル1,3-アミノアルコールをTBAF, EtIと反応させることで閉環反応が進行し、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジンを与えた。この反応は、オキサジン環の置換基がすべてエカトリアル位に位置できる出発化合物を用いた場合にのみ進行した。 次いでチオアミドジアニオンのアリル化によりN-チオアシルホモアリルアミンを導き、そのヨード環化反応についても検討した。N-ベンジルチオアミドの環化では、5,6-ジヒドロ-4H-1,3-チアジンの二つのジアステレオマーを75:25の比で与えた。ここで窒素に隣接する炭素上に1-ナフチル基や2-メトキシフェニル基を導入した系は、高い立体選択性を示し、シス体を良好な収率で与えた。
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