研究概要 |
分子触媒の核である遷移金属元素を含む環状構造メタラシクロペンタジエンとブテン骨格に注目し,従来多くの高分子合成や精密合成の重要触媒反応の中間体であるとされてきた不安定な環状化合物を簡単な有機分子から構築し,安定に取りだすことに成功した。X線結晶解析による精密な構造解析と安定性ならびに反応性を解明した。不斉合成に展開しようとこころみたが,現在のところラセミ体である。生成する有機物質の付加価値を高め利用性のある物質へと変換する方法として確立させ,次世代分子技術の進歩に貢献することを目標として検討中である。 具体的には,アセチレン類あるいはジイン類を合成し,メタラシクロペンタジエンとの基本骨格前駆体を調製した。ビニルカルベン前駆体として,置換ビニルジアゾ酢酸エステルを数種合成し,ルテニウム錯体との反応から新たなアリル錯体の生成を発見し,X線結晶解析にも成功した。オレフィンとの反応から,加熱によって不安定ながらカルベン錯体が生成していることが示唆された。一方,アセチレン類の共三量化反応の中間体であるメタラシクロペンタジエン錯体の単離を試みたところ,ジインとロジウム-Pybox反応系において錯体を単離することができた。X線結晶解析(現有設備)により,結合様式について明らかにすることができた。また,不斉配位子を有する錯体の合成,単離,解析にも成功した。本錯体とさらにアセチレン類との環化三量化反応によってベンゼン誘導体の合成に成功した。現在,反応点に近傍における不斉誘導についての可能性を検討している。
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