研究概要 |
多ケイ素環状化合物を液晶材料のメソゲンとして活用することを指向して,2,3,5,6,7,8-ヘキサシラビシクロ[2.2.2]オクタンの橋頭位のカルボキシル化およびエステル化を検討した。2,3,5,6,7,8-ヘキサシラビシクロ[2.2.2]オクタンに超塩基を作用させて橋頭位をメタル化したのち,炭酸ガスで処理することにより対応するカルボン酸をほぼ定量的に得た。単結晶X線構造解析の結果,かご型カルボン酸は結晶中において同方向にねじれたものどうしで対を形成し,それらが液晶のスメクチック相のように層構造をなしていることがわかった。つづいて,かご型カルボン酸を再度超塩基および二酸化炭素で処理することによってジカルボン酸の合成を試みたが,反応は複雑な混合物を与えた。そこで,かご型ジカルボン酸の間接的合成法を種々検討し,かご分子の橋頭位フェニルチオ化,橋頭位カルボキシル化,フェニルチオ基の還元的リチオ化につづく炭酸ガス処理という工程を経ることによりかご型ジカルボン酸の合成ルートを確立した。 つぎに,かご型カルボン酸のエステル化を検討した。まずカルボン酸をジアゾメタンで処理すると対応するメチルエステルが収率93%で生成するのに対し,塩化オキザリルを用いて酸塩化物を経る方法やジシクロヘキシルカルボジイミドを用いてアルコールと脱水縮合させた場合には,対応するエステルは全く生成しなかった。これらの結果はヘキサシラピシクロ[2.2.2]オクタン骨格の嵩高さによりカルボキシル基への求核攻撃が困難であることを示している。そこで,カルボキシラートを求核剤とするエステル化,すなわち光延反応によるカルボン酸のエステル化をおこなったところ,特にアゾカルボン酸ジイソプロピルを用いたときに種々のかご型エステルが収率よく得られることがわかった。
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