研究概要 |
向山Michael付加は有機合成の基本骨格の一つである1,5-ジカルボニル化合物を効率的に合成する信頼性の高い合成反応である。近年、キラルルイス酸触媒を用いて様々な反応の不斉化が実現されてきたが、向山Michael付加の不斉化、とりわけ単純な構造の非環式共役エノン外の反応に関する研究は遅れている。我々は最近、O-アシル-N-トシル-(L)-allo-トレオニン(ArCO_2CH(CH_3)CH(NHTs)CO_2H)とジクロロフェニルボランより簡便に調製できるオキサザボロリジノン誘導体が非環式エノンの不斉向山Michael付加反応に有望なキラルルイス触媒であることを見いだした。本触媒は、アミノ酸残基β炭素上のメチル基によりC(α)-C(β)結合の回転が固定され、O-アシル基部分がオキサザボロリジノン環の上部を覆う構造をとると考えられることから、ホウ素原子上に配位したエノンが触媒分子のO-アシル基と平行配置をとる活性錯体が想定される。本研究では、活性錯体の構造に関してより直接的な情報を得るために、エノンと類似した平面構造を有すると同時により配位能が高いピリジンをモデル分子に選び、種々のオキサザボロリジノンとの錯形成実験を検討した。 いずれの場合も、オキサザボロリジノン環の上面から配位した構造の錯体が高選択的に生成することが^1HNMR解析から明らかとなった。この結果は、想定した活性錯体の構造を支持するものである。上面からの選択的配位の要因を解明するために、ピリジン環4位における置換基効果を調べたところ、負電荷を帯びたスルホニル酸素原子とホウ素原子への配位により電子欠損となったピリジン環との聞の安定化静電相互作用を示唆する結果が得られた。
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