研究概要 |
本研究は、様々な元素の特異な反応性を活用することにより、有機環状化合物の新しい合成法の開拓を目指している。本年度は、下記に示すとおり、(1)環状有機セレン化合物の合成反応、および(2)環状Ni錯体を活性種とする新しい炭素-炭素結合生成反応を開発した。(1)我々は既に、セレンが一酸化炭素雰囲気下、穏和な条件でアミン類と反応することを見出しいる。この反応を、プロパルギルアミンに応用することにより、DBU共存下でリチウムカルバモセレノアートが効率よく生成する事を明らかにした。この塩は室温で容易に分子内環化反応を起こし、5員環のセレノカルバマートを高収率で与えた。同様の手法により、対応する6員環化合物を合成することもできるが、この場合には後半の環化過程が遅いため、銅触媒の添加が必要である。(2)遷移金昼触媒を用いることにより、有機ハロゲン化物と種々の有機金属試薬とのクロスカップリング反応が効率良く進行することが知られている。我々は、これらの反応で使用される有機リン配位子の代わりに、1,3-ブタジエンを利用してアルキルハライド類と有機マグネシウム試薬との反応を検討したところ、従来法では実現が困難であったアルキル基同士のクロスカップリング反応が効率よく進行することを見出した。反応基質としてはアルキルブロミド,クロリド、トシラートの他、フッ素化合物も利用することができる。また、この反応は、環状Ni錯体を触媒活性種として進行していると考えられる。
|