研究概要 |
イェッソトキシンやアドリアトキシンは,魚介類によって引き起こされる下痢性貝毒の原因物質であり,強力な毒性(マウス致死毒性,100μg/Kg)を有する。様々な生化学的研究が行われているが,作用標的タンパクは未だに特定されておらず,詳細な活性発現機構に関してはまったく不明である。天然からの供給量が少なく詳細な研究が滞っており,化学合成によるサンプル供給が切望されている。本研究者は,分子レベルでの活性発現機構の解明を目的に,環状ポリエーテルであるイェッソトキシン,アドリアトキシンの全合成研究を行った。14年度は,両天然物に共通な部分構造であるDEFGH環部分の合成を検討した。分子中央部にある1,3-ジアキシャルメチル基の導入法,および中員環エーテルの効率的な構築法の開発が合成上の鍵となる。2,5-ジメチルフランとの[4+3]環化付加反応,およびタンデムな開環-閉環オレフィンメタセシス反応を経由して合成する計画を立てた。有機スズ化合物(D環部)とWeinrebアミド(H環部)を連結してジエンを合成した。Grubbs触媒を用いた閉環メタセシス反応は期待通り進行し大環状ケトンを与えた。ブロモケトンへの変換を検討したが,生成物が不安定であり単離できなかった。15年度は,大環状アセタールを合成し,ルイス酸を用いる[4+3]環化付加反応を検討する予定である。
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