研究概要 |
拡張π電子系の多硫黄ジチオレート配位子C_8H_4S_8^<2->あるいは関連配位子を有する金属錯体を合成し、その酸化体を得て、M-S-C-C-S(M=Au(III),Rh(III),Ir(III))からなるメタラ環の性状・錯体の酸化過程における性状、ならびに酸化体固体の導電性をしらべた。 ○非対称で、分極した平面性の[Au(C-N)(S-S)]型(C-N=C-脱プロトン化-2-フェニルピリジン(PPy);S-S=多硫黄ジチオレート配位子;C_8H_4S_8^<2->,C_6S_8(C_<10>H_<21>)_2^<2->)のいくつかの錯体を得た。低い酸化電位を示すこれらの錯体を、ヨウ素あるいはTCNQで酸化して得た酸化体固体の電導度は、(2.0-3.8)x10^<-2>Scm^<-1>(室温、粉末加圧成型試料)であった。また、電解酸化によって得た[Au(ppy)(C_8H_4S_8)]_2[PF_6]のX線結晶解析を行い、C_8H_4S_8配位子の硫黄原子を介する2次元的相互作用によって電導経路が形成されていることがわかった。この0.5電子酸化体であるこの錯体結晶の一軸方向の電導度は、5.0Scm^<-1>であった。 ○いくつかの[M(L)(C_8H_4S_8)](M=Rh(III),Ir(III);L=C_5H_5,C_5Me_5)錯体を合成し、それらとBr_2あるいはI_2との反応により酸化錯体を得た。1電子酸化体は、M-X結合をもった[M(L)X(C_8H_4S_8)]およびX^-が対イオンである[M(L)(C_8H_4S_8)]X(X=Br,I)型の錯体として得られ、溶液中では基本的に両者が共存している。このことは、ESRスペクトルにおけるハロゲン原子核とのカップリングによる超微細構造から確認した。2電子酸化体については、[Rh(C_5Me_5)I(C_8H_4S_8)](I_3)のX線結晶解析により、硫黄原子およびヨウ素原子を介する2次元的分子間相互作用を見出した。酸化錯体の電導度は10^<-2>-10^<-8>Scm^<-1>(室温、粉末加圧成型試料)であり、C_5Me_5錯体酸化体の電導度はC_5H_5錯体酸化体にくらべて顕著に低いことがわかった。
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