研究概要 |
一酸化炭素をベースにする有機合成反応は学術的にも実用的にも極めて重要な反応である。特に、不飽和炭化水素のカルボニル化は基質の増炭と官能基化が同時に行われる点で合成化学上有用である。私達は以前に、ロジウム触媒を用いると水性ガスシフト反応条件(CO+水)下、アルキンが環化カルボニル化されてフラン-1(3H)-オンなどの複素環生成物を与える新規な反応を見出した。また、ルテニウム触媒を用いると、アレニルアルコールからも直接ラクトンが生成する新規なカルボニル化反応も見いだしている。そこで、本研究では、有用な多元素環状化合物の新規合成法の開発を目的に、種々の不飽和化合物を対象にそれらの環化カルボニル化を試みる計画を立て、本年度はアレンのカルボニル化を試み、下記の研究結果を得た。 (1)5-アミノペンタ-1,2-ジエンや4-アミノペンタ-1,2-ジエンなどのアレニルアミンをルテニウム触媒存在下、トリエチルアミン中、80度でカルボニル化すると6員環ラクタムが高収率で得られた。 (2)アレニルアルコールのカルボニル化反応の基質適用範囲を調べるために、種々の置換基をもつ1,2,3置換アレニルアルコールのカルボニル化を試みたところ、アルキル基、アリール基やビニル基などの置換基をもつアレニルアルコールからも高収率で置換フラノンが得られたことから、適応範囲がきわめて広い有用性の高い反応で有ることが分かった。 (3)アレニルアルコールのカルボニル化反応機構について検討した結果、ルテニウム3核クラスターを活性種とするカルボニル化反応である可能性が示唆された。また、重水素を使った実験から環化カルボニル化の反応経路についても有益な知見を得た。
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