研究概要 |
不飽和化合物のカルボニル化反応は工業的にも利用されている代表的な金属錯体触媒反応の一つである。私達は水性ガスシフト反応条件下での触媒的環化カルボニル化反応によってアセチレン類からフラノンが高収率で得られることを見出し、水酸基やアミノ基などの反応性官能基を持つアセチレン類では隣接官能基も反応して種々の有用複素環化合物が合成できることを報告している。本研究では、有用な多元素環状化合物の高選択的な新規合成法の開発を目的として、不飽和炭化水素化合物の触媒的環化カルボニル化について検討を重ね、今年度の研究成果として以下のような結果を得た。 (1)2-アルキニルベンジルアミン誘導体をロジウムカルボニル錯体触媒存在下、一酸化炭素30気圧、100℃でカルボニル化反応を行なうと、7員環生成物であるベンゾアゼピノン誘導体か良好な収率で生成した。一方、200℃、70気圧の一酸化炭素加圧下での反応では、6員環のイソキノリノン誘導体が主生成物として得られ、同一基質・同一触媒であっても反応条件によって,異なる生成物を与えることを明らかにした。 (2)ロジウムカルボニル錯体触媒存在下、ノルボルネンをTHF中、一酸化炭素80気圧、60℃で反応させると、2分子のノルボルネンと2分子の一酸化炭素が反応したラクトン誘導体が高収率で得られた。 (3)ロジウムカルボニル錯体を触媒としてアゾベンゼンのカルボニル化を行うと、アゾベンゼン1分子に2分子の一酸化炭素が反応した4環性化合物indazolo[2,1-a]indazole-6,12-dioneが生成した。本系にニトロベンゼンを添加すると良好な水素トラップ剤として機能し、生成物の収率は最高79%まで向上することを明らかにした。
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