研究概要 |
ポルフィリノイドは従来にない分子認識能を持つ機能分子として大きな期待が寄せられている。ポルフィリノイドは構成要素となるジピリルメタンやビピロールの構造特性や置換基の種類により全体の環構造が大きく異なってくるので、種々のイオンや分子の形状に適合した環構造を設計し合成するための方法論の確立が課題となっている。今年度はポルフィリノイドの合成中間体であるフルベンの開発を行うと共に、新規なポルフィリノイドの合成と構造についても明らかにした。 (1)ビスアザフルベンの合成と構造:種々の置換基を有する2,2'-ビピロールからホルミル化,フェニルリチウム/無水酢酸との反応を経て,ビスアザフルベンを30%から55%の収率で単離し,X線結晶構造解析によりアザフルベンの分子構造を初めて明らかにした.また、2,2'-ビピロールのアロイル化、還元等により合成した5,5'-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2'-ビピロールを脱水反応によりビスアザフルベンに導く改良合成法についても検討し,(BOC)_2O等の脱水試薬が有効であることを見出した.これらのビスアザフルベンはポルフィリノイド合成の強力な手段を提供するものである。 (2)新規ポルフィリノイドの合成:2,2'-ビピロールおよびジメチル-2,2'-ジピリルメタンを単位構造とする新規ポルフィリノイドの合成を行った.2,2'-ビピロールと5,5'-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2'-ジピリルメタンとの反応により,イソコロール,ヘキサフィリン,オクタフィリンが3%から5%生成した。このうち、ヘキサフィリンは3つのフェニルジピリルメテン部位と2つのジメチルメタン部位を有する新しい大環状化合物であり、X線結晶構造解析により,8個のピロールから成るオクタフィリンと同様にC2対称性の捻れ構造をとることを見出した.
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