研究概要 |
1.本年度は2位のカルボキシル基、3位のヒドロキシル基と三点で配位可能な配位子である3-hydroxypyridine-2-carboxylic acid (H_2hpic)を選択し、バナジル錯体をメディエーターとするナノストラクチャーの構築を目指し以下の研究を展開した。 2.VOSO_4、・xH_2O(x=3〜5)とH_2hpicを原料とする単核錯体[VO(Hhpic-O,O)(Hhpic-O,N)(H_2O)]・3H_2O及び4核錯体[(VO)_4(μ-(hpic-O,O',N))_4(H_2O)_4]・8H_2Oの合成とキャラクタリゼーションを行った。 3.X線結晶構造解析より、単核錯体および4核錯体の構造を決定した。すべてのバナジウム(IV)中心は水分子を一個含み、二つのH_2hpicがシス位に配位した歪んだ六配位八面体である。単核錯体中の二つのHhpic^-のうち一つはピリジン環の窒素原子がプロトン化を起こして配位に関与しておらず、脱プロトン化した3位のヒドロキシル基のO^-とカルボキシル基のO^-で配位している。4核錯体はhpic^<2->の3位のヒドロキシル基、ピリジン環の窒素原子、2位のカルボキシル基が架橋配位した大環状クラスターであることが判明した。また、水-MeOH溶液中で、H_2hpicとpHの調節により、単核錯体と4核錯体が相互に変換することが分かった。pHの高い状態では、ピリジン環のH^+がはずれH_2hpic分子は3点で配位可能になり、環状錯体を形成する。一方で、H_2hpicの濃度がバナジウムの濃度より多くなると単核錯体を形成する。よって、単核錯体をモノマーとしてみなすことができ、超分子設計の上で極めて重要な現象を見出した。
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