研究概要 |
1.配位子として3-hydroxypyridine-2-carboxylic acid(3-hydroxypicolinic acid, H_2hpic)を選択した。H_2hpicはピリジン環の窒素原子、2位のカルボキシル基、3位のヒドロキシル基と三点で配位可能な配位子である。したがって、H_2hpicは架橋配位子として多核錯体を形成する可能性があり、この配位子を用いることにより、金属錯体をメディエーターとするナノストラクチャーの構築が期待される。硫酸バナジルを原料とし、単核及び4核錯体を合成し、その生理活性評価を行った。 2.X線結晶構造解析H_2hpicとVOSO_4を原料として単核錯体[VO(Hhpic-O, O)(Hhpic-O, N)(H_2O)]・3H_2O(M-V_3HPA)と四核錯体[(VO)_4(μ-hpic-O, O, N)_4(H_2O)_4]・8H_2O(T-V3HPA)を水溶液中で合成した。X線結晶構造解析を用いて得られた錯体の固体状態の構造を決定した。V^<4+>の配位構造は単核錯体、四核錯体ともにオキソ原子と水分子がcis位に配位した6配位の歪んだ八面体[V(IV)O_5N_1]であった。四核錯体はHhpic-のピリジン環のN原子、2位のカルボキシル基、3位のOが架橋配位した環状クラスターであることが判明した。 3.in vitroインスリン様活性の評価 薬物による(±)-epinephrineで刺激したラットの脂肪細胞からのFFAの遊離抑制効果を評価することによって、インスリン様活性を間接的に評価した。ポジティブコントロールであるVOSO_4に比べて、4核のT-V3HPAの活性は低く、単核のM-V3HPAは高い活性をもつことが明らかになった。 本実験により、バナジル錯体のインスリン様活性は、用いた配位子の構造だけではなく、錯体全体の構造にも依存するということが示唆された。
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