研究概要 |
(1)1,2-diaryl-3,4-bis(2,4,6-tri-tert-butylphenylphosphinidene)cyclobutene (DPCB)を支持配位子とし、パラジウムあるいは白金を中心金属(M)とする、π-アリル錯体([M(π-allyl)(DPCB)]^+)、メチルトリフラート錯体([MMe(OTf)(DPCB)])、およびジカチオン錯体([M(MeCN)_2(DPCB)]^<2+>)の合成法を確立した。また、少量の水を含む溶媒中で、メチルトリフラート錯体とヒドロシランとを反応させることにより、ヒドリドトリフラート錯体([MH(OTf)(DPCB)])をほぼ定量的に発生できることを見いだした。この錯体は1,3-ジェンと反応し、対応するπ-アリル錯体をほぼ定量的に与えた。π-アリル錯体は、ヒドリド錯体とアリルアルコールとの反応によっても高収率で合成できた。後者の反応ではOH基の脱離を伴って水が副生する。すなわち、有機化学的には脱離能をほとんど示さないヒドロキシ基を触媒的に活性化し、有機反応に利用できる可能性を示すことができた。 (2)上記の知見を基に、アリルアルコールをアリル化剤とする、アニリンおよび活性メチレン化合物のアリル化触媒反応を開発した。この反応は、触媒量の[Pd(π-allyl)(DPCB)]^+錯体の存在下に速やかに進行し、副生成物は水だけという、原子経済性に優れたクリーンな触媒反応である。cis-2-buten-1,4-diolと活性メチレン化合物との反応では、ジヒドロフラン誘導体が良好な収率で合成できた。 (3)ジカチオンパラジウム錯体([Pd(MeCN)_2(DPCB)]^<2+>)が、カルバミン酸ベンジルのエノンに対する共役付加反応の触媒として高い活性を示すことを示した。この触媒は[Pd(MeCN)_4]^<2+>に代表される従来のジカチオンパラジウム錯体と比べて安定であり、触媒量をかなり軽減することができた。
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