研究概要 |
本研究では多元素環構築のために有用となる新しいラジカル反応による方法論の開発に取り組んでいるが、一酸化炭素の取り込みと共に複素環構築を達成するタンデム型のラジカル反応手法の開発について検討を行った結果、本年度においては以下のような成果を得た。 硫黄やセレンのような16族上でアシルラジカル種によるS_Hi反応が良好に生起することを見出しているが14族元素であるケイ素上での同様なS_Hi反応は容易ではない。ラジカルメディエーターを変化させ、ケイ素-スズ結合を持つ基質を用いたカルボニル化反応系について詳細な検討を行った。その結果、トリストリメチルシリルシランをメディエーターとするときに期待した五員環形成反応が良好に進行しシラシクロペンタノンが得られた。一方でこの連続的カルボニル化-環化反応にはこれまでに報告例がほとんど知られていない分子内1,4-スズ移動反応が競争することを突き止めた。ab initio MOならびにDFT計算を行ったところ五配位型の前面攻撃による遷移状態が導き出された。また、転位速度を算出し計算結果との比較を行った。 つづいてアミノ基を持つアセチレン化合物のラジカルカルボニル化を検討した。この反応ではケテニルラジカルの発生とつづく分子内アミノ基によるケテン部位への求核付加を期待した。例えばラジカル開始剤存在下、アルキニルアミンを基質とし一酸化炭素加圧下にアルカンチオールと反応させたところ、チオメチレン基をα位に有する6員環ラクタムが主に生成することがわかった。本反応はさらなる検討を経て新規なラクタム環形成法となることが強く期待される。
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