研究概要 |
水は氷になる際に体積が約一割膨張し、変形しない容器中で水を凍らせると内圧が-20℃で2千気圧に達する。そこで、水を媒体に用い、水が氷になる際の高圧(以下氷化高圧と呼ぶ)を用いれば、安価で、かつ簡便に高圧を実現でき、多くの有機合成反応に適用することができるものと考えた。本研究では、氷化高圧法を直接的不斉触媒アルドール反応、直接的不斉触媒マンニッヒ反応に適用した。 不斉触媒アルドール反応 Barbas, List等はアセトンとアルデヒドとのアルドール反応において触媒量のプロリンが活性化剤として有効であることを明らかにしている。しかし、不斉収率は満足できるものではない。この反応に氷化高圧法を適用したところ、芳香族アルデヒドとアセトンとの反応では、氷化高圧下では室温、常圧に比べ、化学収率、光学収率ともに若干向上することを見い出した。 直接的不斉触媒マンニッヒ反応 マンニッヒ反応は含窒素化合物合成に欠くことのできない、有機合成化学上重要な反応である。最近Barbas, List等はプロリンを触媒とするアルデヒド、アニシジン、アセトン間の直接的な3成分不斉マンニッヒ反応を報告しているが、用いることのできるアルデヒドが電子不足であり、反応性の高いものに限られるといった問題があった。氷化高圧法をこの反応に適用したところ、常温、常圧では反応が全く進行しない電子豊富なアルデヒドの場合でも、収率よくかつ高い不斉収率で付加体が得られることを見い出した。本反応において、圧力が収率の向上に、低温が不斉収率の向上にそれぞれ寄与していることを明らかにした。
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