これまで研究代表者は、触媒量のN-t-ブチルベンゼンスルフェンアミド(1)と化学量論量のN-クロロスクシンイミドを組み合わせ用いるアルコールの触媒的酸化反応を見出している。この触媒的酸化反応は穏和な条件下で進行する非常に適用範囲の広い酸化法であるが、今回この触媒的酸化反応をより効率的に行うため、N-クロロスクシンイミド(NCS)の代わりに臭素を共酸化剤として用いるアルコールの触媒的酸化反応の検討を行った。 様々な反応条件検討を行った結果、臭素を共酸化剤として用いる場合には従来用いてきた触媒1は反応中に分解することが分かり、引き続き各種スルフェンアミドを合成し、その触媒活性を検討した。その結果、N-t-ブチル-2-ニトロベンゼンスルフェンアミド(2)が臭素に対する触媒として効果的であることが分かり、臭素を触媒2を組み合わせ用いることによって様々な第一級および第二級アルコールが効率的に酸化されることを明らかにした。これまで報告された臭素を酸化剤として用いるアルコールの酸化反応では第二級アルコールのみが酸化されていたが、今回開発した触媒的酸化反応は応用範囲の広い臭素酸化であると云える。 さらに、NCSとスルフェンアミド触媒1を組み合わせ用いる手法では立体的に嵩高い位置の水酸基は酸化されにくいという問題点が残されていたが、Br_2とスルフェンアミド触媒2を用いると、これらの水酸基の酸化も円滑に進行することが分かった。
|