研究概要 |
(I)2座配位子であるMartin ligandを2個もつ5配位P-H(equatorial)ホスホラン(10-P-5)(1)をBuLiで脱プロトン化し、ホスホラニドアニオン(10-P-4)(2)を系中で発生させ、共役アルデヒドあるいはケトン(R1R2C=CH-CR3=0)(3)を反応させ、1段階で6配位のホスファート(12-P-6)(4)のリチウム塩を得ようと試みた。4の生成を31P NMR(-100ppm位の高磁場に表れると予想される)で検出しようとしたが、できなかった。そこで、生成物を水で分解したところ、対応する付加体(アルデヒドあるいはケトン)(5)を30-50%の収率で得た。5をさらに2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(6)に誘導し確認した。3でR1=CH3,R2=Hの場合はR3の種類にかかわらず、2種類の立体異性体が観測された(19F,31P NMR)。さらに、フェナントレンキノン(7),ベンジル(8)を2と反応させたところ、期待する6配位のホスファート(12-P-6)(4)をカリウム塩のクリプタンドとして得た。7は、X-線結晶解析により、構造を決定した。 (II)5配位超原子価炭素化合物の新規な例として、1,8-ジメトキシ-9-メチレンチオキサンテン(9)を合成し、10-位の硫黄をメチル化し、1,9,8-位の酸素- 炭素-酸素間に超原子価結合(3中心4電子結合)の生成を試みた。9のX-線結晶解析の結果、1,9,8-位の結合は極めて歪んでおり、1,9-位および8,9-位の結合距離はほぼ2.80あり、強い相互作用は認められなかった。9の酸素誘導体である1,8-ジメトキシ-9-メチレンキサンテン(10)の合成も検討した。
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