研究概要 |
硫黄架橋タングステン錯体[W_3(μ_3-S)(μ-S)_3(μ-OAc)(dtp)_3(CH_3CN)](1)とアセチレン誘導体Methylpropiolate(HC≡CCO_2CH_3,MP)またはDimethylacetylenedicarboxylate (H_3CO_2CC≡CCO_2CH_3,DMAD)との反応より興味ある錯体を得た。 錯体1が酢酸共存下で一分子のMPと反応し、錯体[W_3(μ_3-S)(μ-S)_2-(μ-S-CH=CHCO_2CH_3)(μ-OAc)(dtp)_4](2)により、さらにもう一分子のMPと反応した錯体[W_3(μ_3-S)(μ-SCH=CHCO_2CH_3)(μ_3-SCH=C(CO_2CH_3)S)(μ-OAc)(OAc)(dtp)_3](3)になることを見出した。同様な反応が錯体1とDMADとの反応でも進行し、二分子のDMADが付加した錯体[W_3(μ_3-S)(μ-SC(CO_2)=CH(CO_2CH_3))(μ_3-SC(CO_2CH_3)=C(CO_2CH_3)S)(μ-OAc)(dtp)_3](4)が生成した。錯体3および4のX線結晶解析から、錯体1に二分子のMPまたはDMADが反応し、それぞれ三本のC-S結合が生成していることが判明した。 X線構造の比較より、3のC-S結合を一本持つ-SCH=CH(CO_2CH_3)部位で、S原子に対してエステル基がtransとなっているのに対し、4のC-S結合を一本持つ-SC(CO_2)=CH(CO_2CH_3)部位では、S原子に対してエステル基がcisとなっていることが判明し、^1Hおよび^<13>C NMRの結果もふまえ、立体障害を考慮した反応メカニズムを提案した。
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