ゼラチンや寒天などは水をゲル化できる物質として知られているが、油や有機溶媒をゲル化できる物質の報告は多くない。自然環境に悪影響を与える家庭内廃油・流出原油・工業廃液などは回収・処理が困難なものであるが、油や有機溶媒が主成分であるこれらの廃液をゲル化させることができれば、扱いがたやすくなりリサイクルの可能性もでてくる。分子設計のコンセプトとして、いくつかの条件が重要であることは分かってきたが、未だゲルのミクロ構造やゲル化のメカニズムに関しては明らかでないことも多い。本研究では、アミノ酸誘導体型オイルゲル化剤について、そのジメチルスルホキシド(DMSO)溶液のゲル化過程を、主に散乱法を用いてミクロ構造やダイナミクスについて調べることで、ゲル化のメカニズムを明らかにするとともに、オイルゲル化剤としてより適した構造を提案していくことを目的として研究を行った。その結果、(1)濃度によらないミクロ構造が形成され、高濃度ほど密に詰まった、自己相似的なクラスター構造を形成していることがわかった。また(2)動的光散乱法によって、ミクロクラスター形成から系全体のゲル化に至る過程に相当すると思われる挙動が観測された。これらより、空間的に不均一なクラスター形成過程が存在すると結論した。
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