イオン性液体は氷点下から300℃以上まで幅広い温度域で液状の塩であり、蒸気圧がないため安定で安全な電解質溶液となる。これに高速プロトン伝導能を付与させることを最終目的とする。 平成14年度はイオン性液体の設計指針を確立するために、多種のイオン性液体を合成し、構造と物性の相関について検討を行った。まず、解離性水素イオンを有するイオン性液体を設計した。具体的には、イミダゾール誘導体と有機酸を等モル混合し、中和反応による塩形成を通じてイオン性液体を得た。その結果、多くの新規イオン性液体が得られたので、物性を比較検討した。イオン性液体のイオン伝導度は系のガラス転移温度や粘度の影響を大きく受けるため、室温で10^<-2>S・cm^<-1>を超える高イオン伝導性の液体から、ほとんどイオン伝導を示さないものまでが得られ、機能を設計するための基礎知見を整理できた。次いで、易動性のプロトンを有するイオン性液体の設計を試みた。我々は既に、アルカリ金属イオン性液体の設計に成功しているが、その誘導体の中にアルカリ金属イオンの代わりにプロトンを含む塩が含まれている。これらの塩のプロトン伝導性はまだ測定していないが、充分可能性があると思っている。さらに、特定の高次構造がプロトン伝導には重要であるので、イオン性液体に分子集合能を付与した系も作成した。カチオンとアニオンのいずれかあるいは両方に長鎖アルキル基を導入し自己集合させたところ、イオン性液体ドメインが2次元的に広がった"イオン性液体ナノシート"と呼べるものが得られた。これら多くの塩についてのプロトン伝導性測定は次年度の検討項目である。
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