研究概要 |
液晶は,液体がもつ流動性と結晶が有する光学的異方性を兼ね備えた高性能・高機能材料である。外場によって分子配列を迅速に自在に制御できるため,誘起される屈折率変化(0.1以上)は多材料を圧倒して大きい。光の変調を考えた場合,屈折率変化は大きくかつ高速であるほど好ましいので,液晶はフォトニクス材料として最適な材料の一つといえる。 これまでに,単一分子に高分子物性,液晶性,光応答性を付与した高分子光応答性液晶の分子設計指針を提案し,側鎖にアゾベンゼン部位を有する一連の高分子液晶を開発し,液晶相と等方相を高速(数100ns)に光変換できることを示した。この現象を利用して二光束に分けたレーザービーム(488nm)を高分子アゾベンゼン液晶フィルム上で干渉させ,干渉縞明部のみで光相転移を誘起すると,このフィルムが回折格子として機能することを見いだした。さらに,この回折格子を利用して書換可能なホログラム記録材料の開発に成功した。 本研究では,高分子アゾベンゼン液晶がもつ,高速光応答性・高屈折率変調度・成膜性などの特性を活用し,三次元表示を目指した動的ホログラム材料を開発することを目的としており,今年度は,シアノビフェニルおよび3環フェニルアセチレンを有する高分子アゾベンゼンを設計・合成し,それらの物性について検討した。合成した高分子アゾベンゼンはいずれも液晶性を示すことが明らかとなった。一軸配向したフィルムの透過光量から求めた複屈折は,シアノビフェニルを有する高分子アゾベンゼンが0.07で,3環フェニルアセチレンを有する高分子アゾベンゼンが0.35であった。この結果から,3環フェニルアセチレンを導入した高分子アゾベンゼンがより高い複屈折を示すことが明らかとなった。
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