ABA型のトリブロック共重合体がB成分鎖に対する選択溶媒中で形成する物理ゲル化の網目構造に関する知見を得るために、ポリメチルメタクリレート-block-ポリ(tert-ブチルアクリレート)-block-ポリメチルメタクリレート(PMMA-PtBuA-PMMA)と、PtBuAに対する良溶媒である1-ブタノールからなる溶液の線形粘弾性測定および小角X線散乱(SAXS)測定を行った。粘弾性測定では、2.9%溶液はゲル化せず、5.9%溶液は室温で物理ゲルを形成することが示されたが、各々のSAXSプロファイルには、散乱強度の絶対値以外に両者の相違は認められなかった。8.1%ではショルダーピークが、12.1%では明確なピークが観測された。31.0%で観測されたシャープなSAXSピークは、その温度変化から、秩序構造が形成されたことに由来する可能性が示唆された。8.1%以上の溶液で見られる散乱ピークが、ブリッジ状のPtBuA鎖で架橋されたPMMA会合コア間の距離に相当するものであるとすれば、5.9%溶液で系がゲル化しているにもかかわらず散乱ピークが見られないことは、この濃度で網目構造形成に寄与しているブリッジ鎖あるいはPMMA会合コアの割合がまだ少ないためと考えられる。PMMAコアを架橋点として密な網目が形成されるためには、12.1%程度の濃度が必要であるといえる。また31.0%の溶液では秩序構造を形成しているものの、線形粘弾性挙動は低濃度の系と類似した緩和スペクトルを示すことがわかった。このことは、PMMAコアが規則的に配列した状態であっても、測定温度・周波数範囲内では系の粘弾性挙動を決定する緩和機構は同じであることを示していると考えられる。
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