ABA型のトリブロック共重合体がB成分鎖に対する選択溶媒中で形成する網目構造を大変形させたとき、あるいは大変形後の復元時の分子鎖形態に関する知見を得るために、ポリメチルメタクリレート-block-ポリ(tert-ブチルアクリレート)-block-ポリメチルメタクリレート(PMMA-PtBuA-PMMA)と、PtBuAに対する良溶媒である1-ブタノールからなる溶液の粘弾性挙動を測定した。前年度の研究で、PMMA-PtBuA-PMMA/PtBuA準希薄溶液は、60℃以上の高温では分子状に溶解しているが、50℃以下でPMMA鎖の会合が始まり組替え網目構造を形成し、温度低下とともに高周波数領域で平坦弾性率を示しゲル化が起こることがわかっている。 高温のゾル状態から冷却して作成した物理ゲルに対して定常せん断流動を印加すると、ストレスオーバーシュートを持つような応力-歪曲線が得られた。4.4wt%、30℃の試料に対して定常流動→静止→定常流動→静止…のサイクルを繰り返すと、オーバーシュートの応力値が徐々に減少し、また定常流動後の平坦部の貯蔵弾性率の値は、流動印加前に比べて約半分程度に低下していた。一方8.0wt%、35℃のゲルでは、上記のサイクルを繰り返してもストレスオーバーシュートの挙動はあまり変わらず、また定常流動前後の複素弾性率もほぼ一致した。これらの結果から、8.0wt%では流動によってPMMA鎖が会合点から引き抜かれても、近接するPMMA会合コアが多いために網目構造が復元されやすいのに対し、4.4wt%では周囲に会合コアが少ないために、PtBuA鎖が弾性に寄与しないループ状の形態をとる確率が高いと考察される。
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