研究概要 |
近年,液晶状態のような秩序構造と流動性をもった系に,高分子や両新媒性分子やコロイド粒子などを混合させたときに起こる相分離現象が注目されている。また工学的応用面においては,相分離現象を利用し秩序化した複合材料等の設計に利用されている。液晶相に高分子を混ぜることにより,ネマチック-等方相分離をはじめ,様々な相分離が起こる。これらの系では、濃度(保存系)と配向秩序(非保存系)の2つの秩序パラメーターが平衡や非平衡現象の物性を支配している。本研究では、高分子と液晶分子の混合系や液晶ゲルにおける相分離について理論的に研究している。本年度は高分子と液晶分子の混合系の相分離界面の界面張力,核生成,液晶溶媒中の液晶ゲルの体積相転移について研究を行った。 液晶性高分子でつくられたゲル(液晶ゲル)と低分子液晶の混合系で起こるゲルの体積相転移についての理論の構築を行った。また液晶ゲルの体積相転移についての電場や磁場などの外場の影響について研究した。外場の強さが増すにつれて,溶媒である液晶分子と高分子ゲルの間の異方的相互作用により,ゲルの形が不連続に伸張することを示した。また温度により,それが連続的に変化する場合もあることを示した。これらの結果は実験を定性的に説明することができた。 高分子と液晶分子の混合系では温度や濃度に依存して等方相(I)とネマチック相(N)の2相分離や2つの等方相に相分離する。各相分離界面の界面張力は温度と共存曲線の濃度,さらに界面での液晶分子の配向秩序に依存する。ネマチック-等方相分離の界面張力が温度の減少に伴い2.5乗則で増加していくことがわかった。このような大きな指数則は配向秩序と濃度の勾配項からの寄与によって現れる。また計算した界面張力と古典核生成理論をもとに,等方相の準安定領域からの核生成について研究した。3重点の低温側のある領域では2段階の核生成が起こることを見つけた。濃度や配向秩序によって相分離の進行を様々に制御できる。
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