研究概要 |
1.ポルフィリン類はクリーンな癌治療法として注目されている光線力学療法(PDT : photodynamic therapy)の光増感剤として注目を浴びている。水溶性ポルフィリン誘導体は水溶液中で一般的にface to face type型のスタッキングすることが知られており、このスタッキングは2〜多量体へと会合体を形成し、多量体になるに従いだんだん蛍光が小さくなり、十分な一重項酸素を発生することができなくなりPDT用光増感剤として不適当である。このような観点から、本年度は高い水溶性を有し、head to tail型の会合体を動的に制御できる糖鎖およびアルキル鎖を連結したポルフィリン誘導体の開発に取り組んだ。 2.マルトヘキサオース(Mal)およびデシル鎖(D)を有する5,10,15,20-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)ポルフィリン誘導体{nDhMalTPP(n=糖鎖あるいはアルキル鎖の数)}を合成した。これらの化合物の溶液中での会合挙動を電子吸収ならびにCDスペクトルにより検討した。 3.マルトヘキサオースを連結させることにより,ポルフィリンは水に可溶となった。UVスペクトルから4MalTPPはface to face型の会合体を取っていることがわかった。また、CDスペクトルからface to face型の中でも、ポルフィリン同士の位相がずれた糖鎖間の相互作用が可能なサンドイッチスタッキングの会合体を形成したものとみなされる。3MalTPPもface to face型の構造を取っていると考えられる。cis2MalTPPはhead to tail型ならびにface to face型の構造も取っていると考えられる。すなわち、糖鎖のみでは会合体を制御できないということが判明した。一方、糖とアルキル基を連結した1D3MalTPPもcis2D2MalTPPはともに、head to tail型の構造を取っていることが判明した。 以上から、アルキル鎖と糖鎖の組合せによるポルフィリン会合体の制御の可能性をみいだした本研究の知見は、今後PDTへの応用が期待される。
|