研究概要 |
物質生産を効率的に進めるための有効な触媒として、組み合わせにより多種多様な触媒創製が可能な非共有結合型の有機無機ハイブリッド触媒材料の開発を行った。触媒機能を有するハイブリッド組織体として、以下の2種類について検討した。組織体(1)は、天然タンパクとしてアルブミンやアポミオグロビンを用い、これにビタミンB12誘導体や鉄ポルフィセンを組み合わせた。組織体(2)は、合成ペプチド脂質が形成する二分子膜に、疎水性ビタミンB12を導入したものである。 (1)ヒト血清アルブミン(HAS)とビタミンB12誘導体との組み合わせにより、B12人工酵素系を構築した。HAS中に取り込まれたビタミンB12誘導体は、バルク水相から隔離され非極性なミクロ環境に存在しており、分子運動が抑制された特殊環境にあることが明らかになった。本ハイブリッド組織体は、ビタミンB12活性の機能発現が期待できる。 また、アポミオグロビンと鉄ポルフィセン誘導体から再構成ミオグロビンを構築した。この再構成ミオグロビンは、自動酸化を受けにくく、酸素親和性が極めて高い。天然ミオグロビンと異なり、一酸化炭素よりも酸素に親和性が高く、高感度酸素センサーとしての利用が期待できる。 (2)有機無機ハイブリッド触媒として合成二分子膜と疎水性ビタミンB12の組み合わせによるビタミンB12人工酵素を構築した。近年明らかになったビタミンB12酵素のX線構造解析の結果をもとに、反応に重要な役割を果たしていると考えられるアルギニン、ヒスチジンを合成脂質に導入した。これらが水中で形成する二分子膜中に、ビタミンB12を疎水的に化学修飾した化合物を取り込ませ、二分子膜型ビタミンB12人工酵素を構成した。この人工酵素系では、合成二分子膜のミクロ環境効果によりアポタンパク機能が発現し、均一溶液中では進行しない官能基の1,2-転位反応を効果的に進行させることに成功した。
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