1.糖脂質含有単分子膜の構造解析 スフィンゴ糖脂質を含んだ脂質組成の気-液界面単分子膜を作製し、マイカ基板などに累積して、脂質膜組成に依存したドメイン構造について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて直接観察を行う。本実験では、マイカ基板に単分子膜を2層累積することで、脂質膜の親水基表面の溶液中での脂質のトポロジーをAFMで観察した。マイカ基板に接する脂質はリン脂質を用いて、2層目には糖脂質を含んだリン脂質との混合膜を用いた。 脂質の組成や単分子膜を形成する温度などの影響により特徴的なトポロジーが観察された。ガングリオシドGM1とリン脂質の混合膜では、リン脂質の種類に応じて異なる集合構造が見られた。さらに、そのような集合構造はコレラ毒素のBサブユニットの結合挙動に影響を与えていることを明らかにした。 2.糖鎖レプリカペプチド脂質の作成とその機能 糖鎖の認識はペプチドで置き換えることができる。インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)は、宿主細胞の細胞膜のGM3やシアル化ルイスX等の糖脂質を受容体としている。HAは遺伝子交雑による抗原性の変化に伴う亜型が生じるために、亜型間にまたがる広域薬剤の開発が望まれている。多種のオリゴ糖鎖の活性を検討することは糖鎖の供給の問題で現実的に難しい。そこでヘマグルチニンに結合できる糖鎖レプリカペプチドを15アミノ酸のランダム配列を有するファージライブラリーから検索した。得られたペプチドは亜型の異なるヘマグルチニンに結合する能力を有していた。得られたHAに結合性を有するペプチドをリポソーム表面に固定化したところ、両亜型のインフルエンザウイルスのMDCK細胞への感染をin vitroで阻害することが見いだされた。さらに、動物実験に置いても感染阻害実験にも成功した。
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