本研究では生体膜モデルである単分子膜を用いた糖脂質あるいはペプチド脂質のドメイン構造の形成機構の要因である非共有結合について解析し、脂質膜構造と受容体機能との関連を解析した。 スフィンゴ糖脂質を含んだ脂質組成の気-液界面単分子膜を作製し、マイカ基板などに累積して、脂質膜組成に依存したドメイン構造について原子間力顕微鏡(AFM)を用いて直接観察を行った。脂質の組成や単分子膜を形成する温度などの影響により特徴的なトポロジーが観察された。リン脂質のみの膜でも二つの相状態の混合膜になっていることが示された。ここにガングリオシドGM1を加えるとゲル相と思われる領域に集まっている様子が観察された。さらに、B16メラノーマ細胞から抽出した脂質膜を累積してAFM観察したところ、糖脂質と思われる集合構造が観察された。これにより、モデル膜で示された糖脂質の集合構造は生体膜でも形成されていることが示された。 糖鎖の認識はペプチドで置き換えることができる。インフルエンザウイルスのヘマグルチニンに結合できる糖鎖レプリカペプチドをファージ提示ペプチドライブラリーから検索した。ヘマグルチニンに結合したファージを溶出する糖鎖の種類により異なるペプチド配列を得ることが出来た。得られたペプチドは異なる亜型のインフルエンザウイルスのヘマグルチニンに結合し、細胞へのウイルスの感染を阻害することが示された。
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