研究概要 |
陽子反陽子衝突実験によるヒッグス粒子の探索(計画研究A01)」では,米国フェルミ国立加速器研究所の陽子・反陽子衝突型加速器テバトロンおよびCDF検出器を用い,世界最大の重心系エネルギー2TeVでの陽子・反陽子衝突によって生じる事象の性質を調べることによって,素粒子物理研究を行う。2001年春より本実験が開始され,現在データ収集とそれに並行した物理解析が進行中である。これに先立って収集されたデータの解析も行われており,以下の解析結果が現在得られている。 (1)ボソンとのみ結合するボソフェリック・ヒッグス粒子を探索した結果,質量下限値として82GeV/c^2を得た。 (2)超対称性粒子グルイーノとスカラークォークを探索した結果,グルイーノの質量下限値として195GeV/c^2を得た。またグルイーノとスカラークォークの質量が等しいという仮定の下で,グルイーノの質量下限値として300GeV/c^2を得た。 (3)Wボソンとジェットの随伴生成事象において,シリコン飛跡検出器を用いたb-ジェット同定とレプトンを用いたb-ジェット同定の両方によってb-ジェットを含むことが確認されたW+2,3ジェット事象は標準理論予言が4.4±0.6であるのに対して13事象が検出された。 (4)光子とb-ジェットの随伴生成事象において,大きな消失エネルギーのある事象は標準理論予言が7.6±0.7であるのに対して16事象が検出された。 (5)シングルトップクォーク生成事象の探索を行った結果、生成断面積の上限として14pbを得た。 今後の物理解析の計画としては、ヒッグス粒子探索のいくつかのチャンネルについてのシミュレーションが行われており、信号・バックグラウンド比を改良するための解析方法の検討が行なわれている。 また検出器開発計画としては、高放射線耐性シリコン飛跡検出器の開発が順調に進展して、実機用シリコンセンサーを60枚試作した。このテストの後、12月より大量製作を開始した。この生産では,企業(浜松ホトニクス)と協力して品質検査を行っている。このシリコン・センサーをフェルミ研究所に送り、そこでシリコン飛跡検出器に組み上げた後に再度検査を行う。この組み上げと検査は米国側研究者と共同で行う。この検出器は平成17年より開始する次期実験の前にCDF検出器の中に設置されて使用される。 CDF実験グループの海外の他のメンバーとも密に協力して実験を進めるために,月2度位の頻度で研究状況をまとめて議論するミーティングをテレビ会議を用いて行っている。
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