研究概要 |
「陽子反陽子衝突実験によるヒッグス粒子の探索(計画研究AO1)」では,米国フェルミ国立加速器研究所の陽子・反陽子衝突型加速器テバトロンおよびCDF検出器を用い,世界最大の重心系エネルギー2TeVでの陽子・反陽子衝突によって生じる事象の性質を調べることによって,素粒子物理研究を行う。2001年春より本実験が開始され,現在データ収集とそれに並行した物理解析が進行中である。これに先立って収集されたデータの解析も行われており,以下の解析結果が現在得られている。 (1)トップクォークとボトムクォークの対に崩壊する重いゲージボソンW'を探索した結果,質量下限値として536GeV/c^2を得た。 (2)MSSM(Minimal Supersymmetry Standard Model)の枠内でトップクォークの超対称性パートナーとなるスカラートップをボトムクォークとレプトンに崩壊するモードで探索した結果,スカラートップの質量下限値として135GeV/c^2を得た。 (3)Rパリティー非保存の超対称模型でスカラートップがτレプトンとボトムクォークに100%崩壊すると仮定して探索した結果,スカラートップの質量下限値として122GeV/c^2を得た。 (4)レプトン数保存則を破ってeμ,eτ,μτのレプトン対に崩壊する中性粒子スカラーニュートリノを探索した結果,質量200GeV/c^2のスカラーニュートリノの生成断面積x分岐比の上限値としてeμ,eτ,μτのそれぞれの崩壊モードに対して0.14pb,1.2pb,1.9pbを得た。 (5)第4世代の安定なクォークの探索を行った結果、質量下限値として電荷e/3(2e/3)に対して190(220)GeV/c^2を得た。 今後の物理解析の計画としては、ヒッグス粒子探索のいくつかのチャンネルについてめ解析研究が行われており、信号・バックグラウンド比を改良するための解析方法の検討が行なわれている。 また検出器開発計画としては、高放射線耐性シリコン飛跡検出器の開発が順調に進展して、実機用シリコンセンサーの大量製作を行った。この生産では,企業(浜松ホトニクス)と協力して品質検査を行い,フェルミ研究所に送り、そこでシリコン飛跡検出器に組み上げた後に再度検査を行った。この組み上げと検査は米国側研究者と共同で行った。CDF実験グループの海外の他のメンバーとも密に協力して実験を進めるために,月2度位の頻度で研究状況をまとめて議論するミーティングをテレビ会議を用いて行っている。
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