本研究は、純ヨウ化セシウム結晶に、テトロード、トライオード、ファインメッシュ型光電子増倍管などの光検出デバイスをとりつけて機械的かつ光学的に長期にわたって安定動作する検出器とするための基礎データの蓄積が目的である。 今年度は力学的強度試験や光学的透明度試験に先立って、これら光検出デバイスの窓材料における、純ヨウ化セシウム結晶が発する波長320nmのシンチレーション光の透過率の優劣を定量的に測定する試験を実施した。光電陰極の窓が通常のホウ硅酸ガラス製とUVガラス製の2本の光電子増倍管と、実際のB中間子の検出に用いられるものと同じサイズの純ヨウ化セシウム結晶およびタリウム添加ヨウ化セシウム結晶の2本の結晶シンチレーターを用いて、結晶と光電子増倍管の組み合わせを変えながら3GeV/cの荷電π中間子が貫通する際のエネルギー損失(約30MeV)による信号の大きさを測った。試験は高エネルギー加速器科学研究機構(KEK)における陽子シンクロトロンのπ2ビームラインにて、行った。ここで、後者のシンチレーション光の波長(460nm)はどちらの光電陰極の窓材料でも透過率に差がないので、これを較正用データとした。その結果、純ヨウ化セシウム結晶と組み合わせる場合はUVガラス窓の方が30%透過率に優れることが分かった。
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