研究概要 |
標準モデルの検証を行う上で重要な小林・益川行列要素を測定し得る過程の多くは、終状態にニュートリノを含むために運動学の完全決定が困難であった。この研究は、電子・陽電子消滅によって生成したBメソン対の片方を完全に再構成することによりもう一方のBメソンの運動学を定め、消失運動量を含む終状態の高精度測定に寄与することが目的である。 今年度は、完全再構成に用いるハドロン崩壊過程の崩壊分岐比基礎データの収集と、サンプル収集法の検討およびイベント抽出の流れの確立に努めた。B→DX基礎データの測定は、Dのさまざまな崩壊、Xの2体、3体まで拡張された。現在の再構成サンプルは、崩壊分岐比が大きいチャームメソンを含む、順二体ハドロン終状態への崩壊過程B→D(^*)π,D(^*)ρ,D(^*)a_1事象に限られるが、総ルミノシティ80fb^<-1>(B反B対85x10^6個)のデータから、25K個のBO(純度81%)、42K個のB+(-)(純度77%)、B全体で67K個(純度74%)の完全再構成されたB事象を得た。再構成効率は約0.1%にあたる。物理解析に対しては、現有の統計量でも物理が議論できる過程としてセミレプトニック崩壊抱合過程への応用を始めた。D(^*)XのXが多体になった場合のバックグラウンドの対策、D(^*)X以外の過程(チャーモニウム+Xなど)の利用、非BB事象排除用に最適化された事象判別法の採用によって収率をあげることが今後の改良点である。 また、以上を効率よく実施するために、上の目的に特化したマスストレージとワークステーションを四日市大学に導入し、Belle共同研究グループのライブラリーのセットアップを行なった。基本的に高エネルギー研と互換性のあるデータ処理の機能を持つことが確認されている。
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