連星中性子星の合体は有力な重力波源の1つである。合体による重力波の波形を理論的に正確に計算し、テンプレートを作成することが、重力波検出、重力波源の決定およびその運動状態の認識のためには必要不可欠である。本年度はまずこれまでの研究を発展させ、数値シミュレーションコードの改良を行なった。具体的には、エネルギーや角運動量が高精度で保存するようにアインシュタイン方程式の解法を改良し、また数値流体コードも衝撃波が高精度で計算できるものへと発展させた。改良されたコードを用いて、主に非等質量の連星中性子星の合体のシミュレーションを実行した。その結果、(i)質量比が1からずれるほど、合体後の形成天体(ブラックホール、または中性子星)の回りに形成されるディスクの質量が大きいこと、(ii)しかしながら質量比が0.85以上1以下の場合には重力波の波形には大きな変化は見られないこと、が明らかになった。 この研究以外にも、大質量回転星の重力崩壊による重力波に関する研究を実行した。大質量星が重力崩壊後中性子星を形成する場合には、数百ヘルツの周波数の重力波が放出されると予想されており、有力な重力波源の1つであると考えられている。申請者は、世界で初めて一般相対論的シミュレーションを実行し、重力波の波形を計算した。その結果、(i)重力波の振幅は、銀河中心で起こったとした場合に、最大で10^<20>、特徴的には約10^<-21>、(ii)周波数は600から1000Hz程度、という結果を得た。これらは、これまで行なわれたニュートン重力や近似的相対論的重力を仮定した結果と本質的には同等である。よって、これまでに得られていた近似的結果が正しいということを再確認したものと言える。
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