本研究は、低周波帯での検出能力の高い小型地震計を開発し地球科学や重力波検出分野に応用することを目的とする。これまでわれわれは半導体レーザーを光源とした高精度地震計を開発した。本研究計画ではこの地震計の改良版を製作し、ドリフトや温度特性などを測定する。さらに応用として重力波検出用SAS防振装置上に設置し、防振比測定を行う。低周波感度を向上させるためには気圧変動などによる温度変化を除去することが有効であることがわかっている。そこで、今年度は従来のレーザー地震計の改良型の設計作業を行った。 具体的には、静穏な環境で観測を行うために孔井般置型とし、外径140mmとした。光源は狭スペクトル線幅の半導体レーザーであるDFB-LD光源を用い、光ファイバーリンクにより本体に光を導入・導出する。これにより、地震計部分は無電源となり熱的ドリフトを回避できる。 孔内設置型にしたことで、参照振子を小型化する必要が生じる。しかし、低周波の感度を維持するために長周期の振子を構成しようとすると大型化してしまう。そこで、タングステン合金の重いおもりと負ポテンシャルバネを併用し、長さ88mmで固有周期5秒が達成できるようなデザインを行った。目標とする設計自己ノイズは1×10^<-10>m/s^2/√Hz at 10mHz〜100Hzで、これは全周波数帯域で最低地面振動であるLow Noise Modelの地面振動が検出できる性能である。このような低雑音を実現するために振り子への帰還信号すなわちコイルに流れる電流を増加させアンプの実質的な雑音寄与を減らした。具体的には巻数を減らしたコイルを付加し、同じ帰還力に対してより大きい帰還信号が生じるようにした。 現在、このような仕様の地震計を製作しているところである。来年度行われる地震計の性能評価に備えて、神岡鉱山の地下1000mの地点に岩盤に直結した花嵐岩の台座を設置した。
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