研究概要 |
本年は複数のレーザー干渉計重力波検出器からのデータを用いて,重力波探査を行う方法について研究を行った.具体的な重力波源としては,レーザー干渉計にとって最も重要な重力波と考えられている,公転軌道期の合体するコンパクト連星からの重力波を考えた.そして,検出される重力波イベント候補に対して,時刻や連星の質量,振幅の同一性の条件を課すことでノイズによって生じているイベントを除去する,コインシデンス解析の手法を確立した.その際には,検出器が離れていることによる重力波到達時刻の遅れ,検出器の感度,及びアンテナパターンが異なることによる予想される重力波の振幅の差,検出器ノイズにより生じる,測定される重力波を特徴づけるパラメータの誤差をすべて考慮した.この手法は,銀河イベント発生シミュレーションテストによって,検出効率が期待されるものになっていることを確認した. 以上の手法を実際のデータ解析で用いるため,コンパクト連星合体コインシデンス解析ソフトウエアを開発した.そのソフトウエアを用いて,2001年夏のTAMA300の約1000時問のデータ,及びLISMの約300時間のデータの解析を行った.そして,両方が安定に動作していた約230時間分のデータについては,イベントのコインシデンス解析を行った.その結果,コインシデンス解析で最終的に残ったイベントは,すべて偶然ノイズによるイベントがコインシデンスしたものと統計的に解釈できるものであった.また,2001年夏のTAMA300の長時間観測による銀河系内でコンパクト連星合体が起こるイベントレートの上限値も得られた. 以上の他に,連星合体の最後などに形成されるブラックホールの準固有振動により発生する重力波の検出方法について研究した.そして準固有振動のパラメータをもれなく探査する方法について確立した.
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