研究概要 |
レーザー干渉計重力波検出器TAMA300は2003年2月から4月の2ヶ月間にわたり8回目の重力波観測実験を行った.我々は,そのデータを解析し,中性子星連星が合体する直前の,数秒から数分の間に発する重力波の探査を行った.解析は,我々が開発してきたデータ解析コードを用いて行われた.その結果,本物の重力波として統計的に有意なイベントは発見されなかったが,重力波発生率の上限値として,1年間に29個以下という値を得た.この結果は,TAMA300の2001年度の第6回観測の結果より約3倍厳しい制限を与えるものである. 2001年度のTAMA300検出器と,神岡鉱山内設置のLISM検出器の同時観測データを用いた中性子星連星合体重力波探査を目的とする,コインシデンス解析を,昨年度より引き続き行った.今年度は,解析結果の詳細な統計的検討を行った.論文は現在投稿中である.また,2003年のTAMA300の第8回目観測と,アメリカのLIGO検出器の第2回目観測は同時観測として行われたが,我々はLIGOグループと共同のデータ解析を開始した.これまでのところ,疑似重力波信号をデータに注入し,コインシデンス解析手法の検討,及び,コインシデンス解析で得られると予想されるイベントレート上限値の概算などを行ない,今後行う全データのコインシデンス解析の準備を進めている. さらに,星の重力崩壊やコンパクト連星系の合体の最後などに形成されるブラックホールの減衰振動により発生する重力波の検出方法について研究し,準固有振動のパラメータをもれなく探査する方法について提唱した.その後,その方法の改良版として,重力波の位相の影響を考慮したパラメータ探査方法について研究を行ない,簡便で有用なパラメータ探査方法を発見した.
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