研究概要 |
平成14年度は,大表面積へのdiamond-like-carbon(DLC)薄膜の形成を試み,得られた薄膜の膜質を評価し,さらにその真空特性を測定した.直径150mm,長さ1000mmのステンレス鋼円筒内面への成膜に当り,複雑な形状へのコーティングが可能であるプラズマCVD(DCグロー放電)法を採択した.この結果,円筒内部全面に亘り,0.7〜1.3μmの膜厚均一性を得ることに成功した.また,こうして製作されたDLC薄膜の膜質について一般的評価を行い,摩擦係数0.1,硬度(ビッカース)2000,表面粗さ(平均)0.02μmが得られたことから,この方法により円筒内面全体に良好な膜質を持つDLC膜を形成できることが明らかになった. 真空特性は,この円筒からのガス放出速度をコンダクタンス変調法で測定することによって評価した.得られた値は4×10^-9 Pa m3 s-1 m2(50時間の排気後)という極めて低いものであり,ステンレス鋼そのものからのガス放出の1/3程度,さらに,酸化処理したTi表面での値よりも低かった.したがって,LCGTのような大型真空装置にとって重要な真空用材料からのガス放出低減化処理の一つとして,このDLCコーティングが極めて有効であることが証明された.次年度はこの方法を用いて,LCGTへの適用を考えたバッフルの製作を行う. LCGT干渉計にとって重要な光学的吸収係数の測定については,DLC膜では本年度は予備的な測定を行ったが,併せて,他の黒色表面,例えばNi-P酸化表面についても吸収係数の測定を始めた.したがってこれら表面の光学特性の比較評価を行うことが、次年度から可能となった.
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