重力波は、アインシュタインの一般相対性理論によりその存在を予言された光速で伝わる時空のひずみであるが、未だ直接検出はなされていない。そこで現在、重力波検出を目的として、日本のTAMA300をはじめ、世界各地で大型重力波検出器の建設が行なわれている。それらに用いられる検出器は、主としてパワー・リサイクリング法を用いた広帯域型干渉計を基本設計としている。しかしながら、将来の重力波天文学の創成にとっては、ある帯域内で感度を高め、しかもその帯域を自由に変えることができる、いわゆる帯域可変型重力波アンテナの実現が必須と考えられている。そこで本研究ではこの帯域可変型重力波アンテナの開発を行なった。 平成14年度の最大の成果は、つり下げられたミラーを用い、また3倍波復調を用いた単一変調方式の信号取得法を用いた帯域可変型干渉計の特性評価を行なったことである。帯域可変型干渉計は非常に複雑な制御を必要とするため、これまで諸外国で行なわれてきた実験は全て固定鏡を用いたテーブルトップ実験であった。しかしこれでは実際の重力波検出器における、つり下げられた鏡との整合性が問題であった。そこで我々は、真空中で超小型のサスペンションシステムを導入し、より現実の重力波検出器に近いかたちで実験を行なった。また諸外国で用いられている複数の位相変調を用いた干渉計の信号取得法の複雑さを回避するため、我々は単一変調方式で3倍波復調を用いた信号取得法を考案し、それを使って干渉計を動作させた。我々はこの干渉計について、周波数応答や安定度などについての特性評価を行ない、重力波検出器としての仕様に堪えうるものであることを示し、この方式を用いた帯域可変型干渉計の基礎を確立した。
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