研究課題/領域番号 |
14048201
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
太田 幸雄 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00100058)
|
研究分担者 |
村尾 直人 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (00190869)
山形 定 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助手 (80220242)
佐野 到 近畿大学, 理工学部, 講師 (10247950)
|
キーワード | エアロゾルの間接効果 / エアロゾルによる雲生成 / 立抗 / 実規模実験 / 硫酸アンモニウムエアロゾル / 塩化ナトリウムエアロゾル / 雲粒のモード径 / 雲粒数濃度 |
研究概要 |
今年度およびこれまでに得られた結果のまとめを以下に示す。実験は2002年〜2005年まで、毎年11月に岩手県遠野市の釜石鉱山日峰中央立坑内の実験施設で行なった。実験施設は、高低差430mの廃鉱となった立坑で、坑頂部分には上昇気流を発生させるためのファンが設置してある。ただし立抗内部で雲核の活性化が起きているのは坑底からの高度30〜50m付近であること、高度100m付近では雲粒数がほぼ一定になっていることから、本実験では坑底から高度100mまでの地点で集中的に観測を行なった。風速条件は2つあるファンの運転組み合わせにより0.8〜1.4mとしていたが、ファンを停止させさらに低風速条件での実験を2005年におこなった。発生させる粒子は、大気中に存在し雲核として作用すると考えられている硫酸アンモニウム((NH_4)_2SO_4)を基本とし、一部塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸アンモニウムと塩化ナトリウムの外部混合とした。同一空気サンプル中の雲粒とエアロゾルを捕集する2段式インパクターを自作した。インパクターの後段に接続されたシリンジでサンプル空気を吸引することで、雲粒・エアロゾル粒子を含んだ空気がインパクター内に導入され、雲粒・エアロゾルがそれぞれ分離捕集される構造となっている。発生させるエアロゾル数濃度を3段階、上昇流速を2段階に変化させ、エアロゾル数および上昇流速が雲の生成過程に与える影響を評価した。本実験で与えたエアロゾル数濃度は清浄な洋上大気から人為影響下の洋上大気中の濃度範囲であり、上昇流は積雲レベルである。立抗内の坑底から27m、34m、41mの地高度において、雲水量、モード粒径、雲粒数濃度を測定した。同一高度での雲粒数を比較すると、エアロゾル数が増加するにつれ、雲粒数も増加する傾向を示した。上昇流速が増加した場合は、雲粒数は増加したが高度上昇に伴う成長割合は減少した。雲水量はエアロゾル数が増加するにつれてわずかに増加しているが、上昇流速が増加した場合はその傾向が顕著に表れている。ただし、大きく成長した雲粒は立坑内で衝突などにより沈着する可能性が高くなるため、雲粒径の大きい低エアロゾル数のケースでは雲粒数・雲水量が低く見積もられている可能性がある。モード径はエアロゾル数が増加するにつれ減少する傾向にあった。以上の結果より、本実規模実験において、エアロゾル数が増加すると、雲水量は大きく変化しないまま、雲粒数濃度は増加し、雲粒径は減少することが確認された。
|