研究概要 |
本研究の目的は、他班が観測的に明らかにしたエアロゾルの物理、化学、光学的特性が、どのような気候影響を持つのかを定量的に評価することにある。今年度は観測班により蓄積されてきたデータを、如何に気候モデルやエアロゾル輸送モデル中に取り込み、エアロゾル特性や気候計算に反映させるかという「データ同化手法」について検討した。 観測データのモデルへの導入方法については、2つに分類できる。1つ目は、モデル中で仮定する物理量やプロセスに関し、汎用的な値を観測値から得る方法である。もう一つは、ある地域、期間での物理量そのものを現実の値として供給し、モデル計算結果と融合して利用する方法である。検討したエアロゾルデータの同化手法は、その後者で利用するものである。 エアロゾル観測データの同化手法の基本的考え方は、気象予報のそれと同じである。ただし、気象予報の場合には、観測結果と予報値との誤差は、すべて初期値の誤差に起因し、大気モデル自体は完全であるという前提がある。一方、エアロゾルの予測モデルでは、初期値のみならず、大気モデルそのものが不確定であり、それらのモデルパラメーターも変数として取り扱う必要がある点が大きく違う。本年度はそれらの一般的な定式化を行い、今後の研究の方向性を議論した。 このようなデータ同化手法を実際の観測データ利用に適用する出発点として、観測結果とモデル計算結果との比較を行った。観測データは北大グループによるエアロゾル光学特性データ(特に単散乱アルベド)、モデル計算はエアロゾル輸送モデルSPRINTARS(竹村ら,2001)による結果である。これらの比較の結果、モデル計算による単散乱アルベドの値が系統的に大きいことが分かった。今後、定式化したデータ同化手法により、このような観測とモデル計算の差が小さくなることを確認することで、本同化手法の有効性を示していきたい。
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